いじめ・体罰問題について質問しました!(青少年問題特委参考人質疑概要)

【畠中】
私は、学生時代、関西学院でアメリカンフットボールを通じて、本当にたくさんのことを学んだ。
山口参考人(山口香筑波大学大学院准教授、柔道世界選手権金メダル)、溝口参考人(静岡文化芸術大学准教授、柔道オリンピック銀メダル)は、柔道界で一流の選手、指導者であるが、指導者やコーチ、先輩などと取り組むという意味では、個人スポーツも集団スポーツにも共通点があると思う。
一番大切なのは、やはりその組織やチームの根底にある理念や哲学。
関西学院のアメリカンフットボールの鳥内監督は、一切体罰は行ってこなかった。
また、勝てばそれは選手のおかげであり、負ければそれは指導者の責任。チームが勝利していくのは、決して伝統やOBのために勝つのではない、あくまで選手自身の人間成長のためである、という理念を持っている。
山口参考人、溝口参考人にお伺いしたい。
スポーツとは一体誰のためにあるとお考えか。
 
【山口参考人】
スポーツというのは、一義的には自発的な行為。第二義的にはコミュニティの形成や、教育的な価値など、スポーツを取り巻く環境の中でメリットは多数ある。
このような意義を認識して、体育とスポーツの住み分けを議論していくことが重要。
 
【溝口参考人】
私は、スポーツ権に尽きるのではないかと思う。
スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことが、スポーツをする権利。
私も柔道を通じて精神と体を作ったが、それだけではなく、組織に属することで、ルールを守るということを学んだ。
青少年期において、社会に入る前にルールを守らないとペナルティがある、みんなに迷惑をかける、ということを学んだ。
 
【畠中】
スポーツは様々だが、おっしゃるように、全てに共通するのは選手自身の人間形成が重要ということ。
私も今後の日本のスポーツの強化を望むが、人間形成も忘れてはならない。
さて、柔術と柔道の違いは何か、お考えをお伺いしたい。
 
【山口参考人】
柔術と呼ばれていた時代は相手を倒す技術を身につけることが目的であった。
平和な時代となり、技術はあくまでも手段として、人間教育を目的としたのが柔道と名前が変わった根底にある。
また、型を学ぶことを通じて、型を作った師の考えが伝わっていく。稽古というが、稽古は古いものを考えるという意味がある。
日本の文化は、教えない文化。型を学ぶことによって、自分でつかみとっていく。
そのような意味では、柔道を学ぶということは日本人の美徳や古き良き伝統を型から学んでいくという意味がある。
 
【溝口参考人】
武術だったものが道に変わるのは、スポーツ化、非暴力化、ルール化ということ。
私が柔道を通して学んだものは、精力善用、自他共栄という、自分が柔道で養った知識や体力を社会に貢献するということ。
柔道というのは、まさに、小さい者でも体が大きくて強い人を投げられる。それが柔の理。それは、技術的なものではなくて、精神的なものでも同じように言える。
 
【畠中】
次に、宮口参考人(宮口幸治宮川医療少年院児童精神科医)、藤崎参考人(藤崎育子開善塾教育相談研究所相談部長)にお伺いしたい。
発達障害について、まだその理解は十分ではない。
学校において、発達障害に関する教員や周囲の理解は今どの程度とお考えか。また、どのような問題意識をお持ちか。
 
【宮口参考人】
少し前に、アスペルガーの少年が関わった殺人事件で、求刑よりも重い判決が出た。社会がまだそのような障害を理解していないということだと思う。
しかしながら、少年院で見ていると、発達障害というのは世間が言うほど大きな問題ではない、と思う。
学校現場で指導が困難なのは知的障害や学習障害の子ども。
発達障害の子どもは指導がすんなりと行える。
発達障害も大きな問題だが、これらの境界知能の子どもが見落とされているのがより大きな問題。
 
【藤崎参考人】
発達障害について詳しい教員は、自分でお金を払って研修や講演で勉強している。
それも大事だが、子どもの家庭での様子などについて保護者とよく話し、意思疎通ができている教員が指導している場合は子どもが落ち着いているという例もある。
教員と親がタッグを組んで子どもを育てるということが必要。
また、自閉症スペクトラム関係の子どもたちに、体育やスポーツ、体を動かすことの楽しさを指導している学校がある。その学校では、子どものすべての能力が上がっている。体を動かすことが知能の発達、社会的な発達につながるということ。
 
【畠中】
発達障害を管轄しているのは厚労省・自治体の福祉部局。文科省や教育委員会、学校との連携が問題となっている。
また、少年院の場合は法務省が担当。
これらの様々な部局の連携について、改善が必要と思うが、いかがお考えか。
 
【宮口参考人】
正直なところを申し上げると、現場での押し付け合いが一番心が痛むところ。
原因の一つに、機関どうしでやってしまうことがある、連携というのは個人のつながりが重要と考える。
私が今勤務している三重県では、「三重子どものこころネットワーク」として、教育や福
祉、行政、司法、警察、NPOの人たちが集まって勉強会を年に二回ぐらいやっている。
 
【藤崎参考人】
医療、福祉、教育、司法、警察などの現場の連携は非常に重要。
今、精神科医が診察に二ヶ月待ちという状況もあるが、その間、教員は指導をやめるというったことなく、きちんと大人同士が話をして、その子どものためになにができるかということを考えるべき。