TPPの前に~ACFTAの意味

日本のマスコミには何故かあまり取り上げられていないが、
ASEAN・中国自由貿易協定(ACFTA)をご存じだろうか。
島国根性でいるうちの日本人には分かりにくいが、ASEANの中華圏化は急加速している。
 
昨年度、中国の貿易相手国の中でASEANの構成比は8.8%だったが、
注目すべきはASEAN向け輸出が前年比59.2%増と他国と比べて突出していることだ。
また一方で、ASEANの対中輸出も、中国の急速な景気回復と相まって前年比81.0%と驚異的な増え方をしている。
2008年末のストックベースで中国の対製造業向け直接投資の11.8%を対ASEAN向け投資が占めており、
「中国とASEANの一体化」が進んでいることが分かる。
これは、2010年1月1日に発行された冒頭のACFTA締結に大きく起因するのだが、
産経新聞でも2回さらっと取り上げられただけだった。
(ACFTA←青字リンクさえしていない・・・が域内19億人と人口規模で世界最大の経済連携協定になる)
 
ACFTAにより、ASEANの中華圏化が加速することは既定事実となった。
また本年1月1日に中台経済枠組み協力協定(ECFA)が発行されたことも重要な意味を持つ。
台湾としては日本や米国とのFTA構築を目指しているが、
国家として認められていないという主張で、中国がこれを阻止している。
 
この報道されないACFTAとECFAで明らかになったのは、
「走出法(海外進出)」という中国の海外経済進出戦略であって、
それによる東アジアの中華圏化が加速しているという事実である。
 
TPPを農業問題だけに矮小化すべきでない。
TPPは米国による東アジアの肝ASEANの分断戦略とも言うことができるだろう。
もちろんそれに乗っかれば日本の未来は薔薇色などと言う気はさらさら無いし、
食糧・エネルギーなど日本の総合的な安全保障を構築しなおす時期に来たように思う。
保守系論壇がTPP反対を主張しているのを見るが、
中国政治力の拡大は、軍事以上に経済において深刻であることを分かってほしい。
わが国防衛力増強の重要性はもちろんのこと、経済外交も死活的に重要な問題なのである。
 
畠中光成

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