憲法第8章「地方自治」について意見表明しました!(憲法審査会発言概要)

みんなの党の畠中光成です。
 
憲法第八章地方自治に関して意見を申し述べます。
 
皆様御存じのとおり、大日本帝国憲法には地方自治の項目がなく、全て法律で規定されていました。日本国憲法への地方自治の規定の新設は、大日本帝国憲法下の中央集権主義、官治主義を抑えて、地方自治という歴史的、伝統的な制度の保障を意味します。この考え方は現代でも不変のものであります。したがって、第八章は現時点においては改正の必要はないと考えます。
 
さて、言うまでもなく、憲法に定める地方自治の本旨は、住民自治と団体自治であります。地方自治が住民の意思に基づいて行われるという住民自治は、ジェームズ・ブライスの地方自治は民主主義の最良の学校であるという有名な言葉にあらわされるように、住民一人一人が共同の問題に関して利益と義務を自覚し、的確、公正な処理を志向する、民主主義の根本にかかわる、決して欠くことのできない考え方です。一方の団体自治は、地方自治が国から独立した団体に委ねられ、団体みずからの意思と責任のもとでなされるという考え方です。
 
一九四九年のシャウプ勧告は、このような視点から、地方、とりわけ市町村の財政力を強化する地方税法の改正を提言しました。しかしながら、その後の制度改正によりシャウプ勧告の理念は失われ、いわゆるひもつき補助金などで地方の裁量権が制限され、自治の独立性が損なわれてきました。国が細部まで定めた規定に従わなければ補助金が得られないわけですから、地方は特色を持った施策を打ち出すことができません。この過程で、日本国憲法において理念が打ち出され、シャウプ勧告で力を与えられたはずの地方自治は骨抜きとなり、中央集権化が進み、政府は肥大の一途をたどりました。
 
みんなの党は、新しい国の形である地域主権型道州制を実現することで、中央集権体制の打破と地方の活性化、格差の是正を目指しています。
 
以下、道州制について申し述べますが、大前提として、現行憲法下でも道州制の導入は可能であることを申し上げます。しかしながら、憲法の基本法典としての性格に鑑みると、道州制は本来、憲法に明確に位置づけられるべき我が国の最重要事項です。その観点から、みんなの党の見解を述べます。
 
道州制は、ともすれば、国の出先機関の廃止や地方の組織見直しによる経費削減、さまざまな権限の移譲による地方自治システムの再構築といった、一部の側面のみで捉えられることもあります。しかしながら、道州制の本旨は新しい国の形をつくることであり、二千四百年昔にアリストテレスがアテナイの丘の上で望ましい国家の規模を思索したのと同様に、政治の本質を考えることであります。
 
我が国の歴史を翻ると、地方の行政単位の見直しは、大きく二度にわたって行われています。すなわち、七〇一年の大宝律令の制定によって確立した律令制と、一八七一年の廃藩置県であります。これらはいずれも、対外的な脅威に対抗するため、豪族や藩から人的、物的資源を集約し、国家が管理、統制することを企図したものでした。その時代的背景は理解できますが、その結果生じたのは、官僚が全国を画一的に支配する中央集権体制であり、地方の衰退であったと言わざるを得ません。
 
今、改めて日本地図を思い浮かべてください。北海道は日本地図の右上端、沖縄は左下端という地図が描かれたことと思います。今度は、それらの地方を中心にした地図を思い浮かべてみてください。北海道は、太平洋を挟んで米国に最も近い地点、沖縄は、東アジアに最も近く、台湾や中国とも近い地点であるということを思い出してください。
 
これらの地方の人的、物的資源が、東京という中央に集約され、分配されているのが、今の我が国の政治経済体制です。これらの地方をそれぞれ中央とし、繁栄の拠点を複数つくることで、我が国全体を元気にし、力強くよみがえらせることが道州制の必要性の根本です。
 
みんなの党の考える道州制は、一言で言うならば三ゲンの移譲です。現在の都道府県を人口規模などを踏まえて十程度の道州に区割りし、その道州に権限、財源、人間を移します。
 
国は、外交や安全保障、通貨の発行など、補完性の原理に基づいて、道州及び基礎自治体に担えない役割を果たし、地方への干渉を極力少なくします。道州は、自治立法権や課税自主権などの大きな権限と責任を担い、その地方の発展をほかの道州と競い合うことで国全体に活力を取り戻します。また、道州制の導入に伴い、地方自治体の役割が飛躍的に高まることになります。
みんなの党は、外国人の参政権には反対の立場ですが、これを憲法上の観点からも明確にする必要があるかどうかも議論の必要があるかと思います。
 
このような道州制の制度設計は、国会の場で議論するのではなく、国と地方の協議の場などを通じて国民全体で考えていくべきものかと考えます。
 
そのためにも、みんなの党は、昨年三月に参議院に道州制移行のための改革基本法案を提出するなどの取り組みを進めております。この法案には、道州制の基本理念と移行のための改革の基本方針などを盛り込んでおり、現在、さらに党内で議論を深め、法案の提出も予定しております。今後の国会審議においては、ぜひとも御協力を賜りますようお願いいたします。
 
以上をもちまして、みんなの党の憲法第八章に関する意見表明といたします。