税と社会保障

にわかに民主・自民の大連立というムードがでてきた。
内閣不信任の時と同様、動機が不純であるのが問題だ。
そもそも震災復興を目的に大連立するのならば、まず被災地の現地に復興院のようなものを設置し、
そこに与野党が協力して事にあたるべきものだ。
しかし、永田町で連立するとなるならば、「復興以外のこと」も連立するということになるだろう。
「復興以外のこと」とは、簡単に言えば「増税」ということになる。
 
増税の主たる理由は、少子高齢化によって膨れ上がる社会保障財源を賄うため。
しかし、増税しても2075年まで高齢化カーブは急激に伸び続けるため(現役1人で高齢者1人を支える構造)、
社会保障はもたないことを何故誰も言わないのだろう。
それまで、負担増・給付減をやり続けるつもりなのか。
社会保障を小さくすれば、生活保護者が増え、現に今その兆候があらわれてきつつある。
移民や外国人労働者を受入れたとしても、結局、社会保障給付が彼らの為に増えてしまうのは、
海外では既に実証済みである。
 
もう打つ手がないかのように見える。
しかし、2075年まではあと65年もある。
実は年金は戦費調達が目的で始まった。
敗戦から今が65年だから、ちょうど真ん中ということができる。
今、これに気付くことで、将来を救う道はある。
社会保障は、高齢化のピークである2075年を視野にいれて設計すべきなのだ。
ちょうど真ん中だから、保険料を平準化してもなんとか持ちこたえることができる。
増税するならそのような抜本改革を伴うべきだろう。
 
特別会計剰余金のうち、年金積立金は150兆円ほどある。
国民からの保険料をまともに積み立てていれば670兆円あるはずなのだが、
修正賦課方式という現在の現役世代が現在の高齢世代を支える仕組にすり替わってしまったため、
520兆円ほど消えてしまった。
その中には、グリーンピアなどの問題もあったことは記憶におありかと思う。
これこそ「消えた年金」なのだ。
年金崩壊は、政府のバラマキと役所の無駄遣いが原因なのに、
少子高齢化が原因であるのとすり替えられているのだ。
年金問題は、世代間闘争ではない。
国民と古い政治との闘いなのだ。
大連立ならば、古い政治の最終形となる公算が高い。
 
残った150兆円の年金積立金に手をつけることを正当化したのが、
2004年公明党が中心につくったいわゆる「100年安心年金」だが、
10年ももたずにそのメッキは剥がれた。
社会保障の抜本改革なき増税では、早晩、もたなくなることを断言する。
 
震災によってあらためてわが国のことを深く思うと、
この大連立による増税論議がいかに馬鹿馬鹿しいものかというのが見えてくる。
それで痛い目に合うのは、子供たちやこれから生まれてくる世代なのに。
 
畠中光成

はたなか光成 <元衆議院議員>公式HP

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