2014/03/18衆議院本会議(NSS/防衛大綱/中期防)
○副議長(赤松広隆君) 次に、畠中光成君。
〔畠中光成君登壇〕
○畠中光成君 結いの党の畠中光成です。(拍手)
私ども結いの党は、一強多弱と言われる政治状況を変えていく大きな志を持って、昨年十二月に結党いたしました。
この結いという言葉には、古来より、田植えや稲刈りなど、一人で行うには多大な労力がかかる作業を集落の住民総出で助け合ってきた日本の伝統精神が宿っています。合掌づくりを守る白川郷や沖縄のユイマールにも、この結いの伝統が息づいています。
日本の文化と経済の融合、クール・ジャパンに御尽力され、私どもと行動をともにしてきた藤巻幸夫参議院議員の御冥福をお祈りしますとともに、志の実現をお誓いしたいと思います。
さて、この国家安全保障戦略と防衛大綱、外交と防衛を一体的に捉えた戦略を明確化したことや、冷戦思想からようやく脱却できたことは、率直に評価したいと思います。
これまでは、中国、北朝鮮、ロシアと、全方位的に懸念を示していましたが、国家安全保障戦略では、中国と北朝鮮に対して備える一方、ロシアに対しては、むしろ協力すべき相手と規定しています。エネルギーや北方領土問題の解決に向けて、ロシアとの信頼関係の増進は望むべくところです。
しかし、緊迫化するウクライナ情勢では、欧米との間で立場を曖昧にすることは大きなリスクを伴っているとも思えます。地政学的に大陸の向こう側の欧州の問題が中東や中国に影響を与えるならば、対岸の火事ではなくなります。
ウクライナ情勢がさらに悪化した場合は、この戦略や大綱は見直されるということでしょうか。総理のお考えをお聞かせください。
二二大綱でも、動的防衛力としてグレーゾーン対応が示されていましたが、新たな防衛大綱では、統合機動防衛力によって、より具体化された内容になっています。大綱の中には、グレーゾーンという言葉が七回、シームレスという言葉が五回登場し、北朝鮮や中国に対しても、非対称的な軍事能力という表現がなされています。とても重要なことで、評価したいと思います。
統合運用によって、陸海空自衛隊の指揮統制や通信は一層機能的にしていくべきです。
しかし、統合された近代的なシステムは、小さな漁船が大量に押し寄せたり、大量の動員でピケを張られたりなど、原始的な手法に対して必ずしも有効ではありません。
領海や離島における海保と自衛隊、原発など重要施設における警察と自衛隊のシームレスな連携は、戦略や大綱からは余り見えてきませんが、大丈夫でしょうか。省庁縦割りの弊害がそもそもグレーゾーンになっていないでしょうか。あらゆる事態を想定し、省庁の枠組みを超えたグレーゾーン対応へのお考えをお聞かせください。
大綱で示された運用上のグレーゾーン対応のほかに、我々政治家が取り組まねばならないことは、法制上のすき間を埋めることではないでしょうか。
海上警備行動、治安出動と防衛出動、警察権と自衛権行使のはざまにある、武力攻撃に至らない武力行使や法益侵害への対処において、自衛隊の武器使用権限の拡大を検討すべきだと考えますが、武力攻撃の解釈変更を前提にあくまで自衛権で捉えるのか、逆に、警察権を拡大するのか、あるいは、領域警備法など個別法を制定するのか、いずれにせよ何らかの取り組みが必要で、そういうグレーゾーンの事態にいかなる法律を適用するのかが喫緊の課題だと考えますが、総理の御見解をお聞かせください。
解釈改憲の是非は横に置いたとしても、安倍総理は、内閣法制局長官の役割をどのようにお考えでしょうか。
本来、法制局長官というのは、議論が過熱したときに、むしろクールダウンさせて、法的論点を整理して説明するのが役割です。
小松内閣法制局長官の参議院での対応は、理事と論争する、委員長の制止にも従わない、たびたび委員会を中断させる。相当問題があると言わざるを得ません。
さらに、衆議院では、予算委員会でも、病気療養中ということで、ほとんど答弁に立たれませんでした。
病を押して仕事をされる姿には敬意を表しますが、そのことと公職の責務が果たせているかは別問題です。集団的自衛権をめぐり国会審議を充実させるときに、その任にたえ得るのでしょうか。各党からも疑問の声が上がっています。
今後も同様の問題が起こった場合、更迭されるのでしょうか。総理の任命責任にもかかわります。御見解をお聞かせください。
現在総理が検討しておられる集団的自衛権行使は、防衛出動下令後に自衛権に基づく武力による侵略の排除が認められた状況下での課題です。
現実的には、そういった事態が起こる可能性はそう高くはなく、先ほど申し上げたグレーゾーン対応が、我が国安全保障上の優先的課題です。それでもなおこの集団的自衛権を行使容認に向けて取り組むのならば、国会で十分な議論を行うのが筋です。
自民党が選挙公約で示された国家安全保障基本法案、中身の是非はともかく、我が国の安全保障を包括的に捉え、自衛権の神学論争から抜け出す意欲的なものだったと思いますが、基本法の国会提出を見送り、自衛隊法、周辺事態法、PKO法など、既存の法律の改正で対応するとの報道がありました。
しかし、そういった個別法の改正ではカバーできないものもあるでしょうし、特に集団的自衛権の行使容認においては、憲法が自衛のための最小限度の自衛権行使を認めているという解釈をどの程度に制限的なものとみなすか、それに伴い行使に一定の制約を設けるか否かといった重要なことは包括的な基本法で規定しておくべきで、それこそ国会の審議によって議論すべきではないでしょうか。
総理は、参議院で、提出するしないは決めていない、野党時代と状況が変わっていると述べられましたが、公約を引っ込めるには、それなりの説明が必要です。どのように状況が変わったのか、改めて基本法を出すのか出さないのか、お聞かせください。
安倍総理には、安全保障という国の根幹にかかわる問題について、多くの声に耳を傾け、国会での議論を大切にし、明快な答弁をいただけるようお願い申し上げ、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 畠中光成議員にお答えをいたします。
国家安全保障戦略及び防衛大綱の見直しについてのお尋ねがありました。
国家安全保障戦略は、我が国の国益を長期的視点から見定めた上で、国家安全保障の確保に取り組んでいく必要があるとの考えのもと、おおむね十年程度の期間を念頭に置いて策定しており、この内容を踏まえて新防衛大綱を決定しました。
現在のウクライナ情勢の変化を受けてこうした中長期的な指針を見直すことは考えておりませんが、国家安全保障会議において、定期的に体系的な評価を行い、中長期的に発展させていくこととしております。
いわゆるグレーゾーン事態への対応に関するお尋ねがありました。
我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、領土や主権、海洋における経済権益等をめぐり、いわゆるグレーゾーンの事態が増加する傾向にあります。このため、武力攻撃に至らない事態を含め、さまざまな事態にシームレスに対応することが必要です。
具体的には、警察、海上保安庁、自衛隊を中心とした関係省庁間の連携を一層強化し、さまざまな事態を想定して、政府一体となった取り組みを総合的に推進してまいります。
自衛隊による領域警備のあり方を含め、国民の生命財産を守り、我が国の領土、領海、領空を守るために必要な課題については、新たに発足した国家安全保障会議も活用して、政治の強力なリーダーシップのもと、しっかりと検討を行い、実効的な措置を講じてまいります。
また、個別的自衛権などにかかわる課題については、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の報告を踏まえ、対応を検討してまいります。
内閣法制局長官に関するお尋ねがありました。
内閣法制局は、内閣法制局設置法に基づき、憲法を初めとする法令の解釈の一貫性や論理的整合性を踏まえて適切な意見を述べること等の役割を担い、内閣法制局長官は、その事務を統括しています。
小松内閣法制局長官は、通院による治療が必要であるものの、通常の勤務に差し支えないと医師から判断されているところであり、内閣法制局長官としての職務を果たしております。今後とも、その職責を果たすものと考えております。
国家安全保障基本法案についてお尋ねがありました。
現在、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会において、集団的自衛権等と憲法との関係について検討が行われているところであります。まずは、この懇談会における議論を待ちたいと考えています。
政府としては、懇談会からの報告書が提出された後、内閣法制局の意見も踏まえつつ、与党とも相談の上、対応を検討した後、閣議決定を行う考えです。その上で、必要があれば、法改正等について取り組むことになると考えています。
このような状況を踏まえ、国家安全保障基本法案の扱いについても、先日の参議院予算委員会で答弁したとおり、どのようにするか決めておりません。(拍手)
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